技術考察 - Norah Jonesさんの歌い方





声の特性・歌の特徴


【声帯・声質】 ■部分振動のハスキーボイス
側筋と口蓋喉頭筋を意識することにより、ハスキーで抜ける声が印象に残る、ジャズに適したセクシーな声を作り上げています。呼気を強く声門に当てることで、内甲状披裂筋の喉頭原音が生まれています。

【呼吸法】 ■複式呼吸 ※複式呼吸の解説はこちらをご覧下さい。
「腹式呼吸」に限定されていないので、胸が上がったり胸郭が開いたりしています。
呼吸に要する筋肉はインナーマッスル、アウターマッスル(腹筋や背筋)両方を用いています。

【呼吸】 ■息を吸う ※吸うと取り込むの違いについてはこちらをご覧下さい。
ブレスの仕方は「息を吸う」ことを基本にしているようです。

【発声】 ■ミックス型 ※カテゴリ解説はこちらをご覧ください。
顎を上げることで地声を高く持ち上げて、喉の筋肉によって高音を出しています。途中からミックス振動になっているため、余計な力みはないといえます。裏声系の発声であるファルセットミックスを使う際は
顎が下がっています。第三者が聞く声は「地声感」に聞こえますが、本人は「地声」と「裏声」と感じながら歌唱しているように思います。声は地声と裏声が分離しているようには聞こえないので、ミックス型と定義しました。

【発声ベース】■ 純正の裏声ベース
チェスト音域の範囲が狭いこと、呼気圧だけのパワーで高音に持ち上げていないこと、チェスト音域でありながら、裏声系の筋肉を意識的に使っていること、「声」そのものが「声」ではなく「音」や「共鳴」の成分が多いこと、細かいフェイクを優しくもしっかりかけられていることなどから、裏声成分に対して地声成分を混ぜて発声しています。またインナーポンプが使用された時の抑揚ができていることなどから
地声に聞こえますが、その正体は純正の裏声ベースと言えるでしょう。

【喉のポジション】 ■高め(部分振動)口蓋喉頭筋の意識
声帯の状態は部分振動のハスキーボイスですが、喉頭のポジションが高めなので、ハスキーでありながら
透き通ったやわらかい地声、共鳴感のある歌声を可能にしています。

【主に使用している声区】 ※声区の解説はこちらをご覧ください。
ウィスパーボイス、部分振動のチェストボイス、全体振動のチェストボイス、ファルセットミックス

【共鳴】 ■口腔・咽頭腔・アデノイド
口腔とアデノイドを意識することで、やわらかくハスキーな声質でありながら、咽頭腔で深みを増幅させることで、女性としての強さや色気が表現されています。
これがNORAH JONESさんの特徴的な声を可能にしています。

【ピッチ】 ■♯ピッチ+♭→深めの♯♭
一つ一つの音の取り方を♯にすることで、抜けるような聞こえ方を実現させています。
そして音を♭→♯♭させて奏でることによって、JAZZの特徴的な抑揚、けだるさ、いい意味での♭感が表現されています。このけだるさの表現の後すぐにピッチを♯♭の技術を使うことで、しっかりとメロディーを引き締めてくれています。

【テンポ】 ■32.5分休符理論 ※テンポの解説はこちらをご覧ください。
32.5分休符理論を用いることで、深い「タメ」が作られています。大人の色気を持つバラードでありながら、深いノリが表現されています。

【リズム】 ■U字リズム ※リズムの解説はこちらをご覧ください。
リズムをU字に感じることで、下から深い立ち上がり、時に浅い下からの立ち上がりが表現されています。
このことから、リズムを細かく感じたり、時には大きく感じることによってリズムがのっぺりとならず、
ゆったりとした曲調でありながら、スピード感を感じる曲や歌い方となっています。

【グルーヴ】 ■後ノリ、前ノリ ※グルーヴの解説はこちらをご覧ください
この二つのグルーヴ感によって、深く大きいタメを感じたり、浅く細かく感じたりすることができます。
このノリの幅が大きければ大きいほど抑揚感が深くなっていきます。

【使用しているポンプ】
アウターポンプ(腹筋や背筋)
最内肋間筋ポンプ(横隔膜あたりにある深層深部の小さな筋肉)
滑舌ポンプ(下の破裂オン、摩擦音の強調)、顎のポンプ(顎を上下に動かすこと)
喉のポンプ(喉を上下に動かすことでフェイクの輪郭をはっきりとさせます)

【滑舌】 ■繊細でソフトな滑舌
舌の使い方をやわらかく、繊細に使うことで温かみがあり優しさと深みの表現を可能にしています。

【抑揚】
抑揚1番(滑舌や顎のポンプによってつくられた細かなリズム)
抑揚2番(肋間筋を使うことでの音のスピード感やフェイクの輪郭をはっきりさせる立ち上げるリズム)
抑揚3番(背筋や腹筋などアウターのポンプを使うことで生まれる大きなリズム)中心の歌唱

【まとめ】
NORAH JONESさんの深さ、色気の歌は「喉頭のポジション」「共鳴」「滑舌」
何よりも下から立ち上げる「ピッチ」と深い「グルーヴ」のミックスよって表現されています。


技術習得へのプロセス


■喉のポジションが低く、地声で高い声が出しづらい方には喉のポジションを上げるために口蓋喉頭筋の意識によって高めの地声を出せるようにします。

■海外アーティストの特徴的なピッチの取り方である「♯感」のエクササイズ、技術として細かく入っている♯♭の技術との訓練をします。

■深みと色気のある声を実現させるために、口腔とアデノイドを中心とした共鳴の習得。

■テンポの取り方を32.5分休符理論に基づいて訓練をし、リズムの1番、2番、3番を理解習得することで深い抑揚を可能にする技術を訓練します。

■前ノリ、後ノリを理解して、けだるさの中にも立ち上げるという深くも細かい「ノリ」を作ります。

■肋間筋と喉のポンプを用いたはっきりとしたフェイクを作っていきます。

■柔らかいタッチの英詩発音の訓練を行います。


技術習得まので期間


■2年〜3年

これはこれから歌を始められる方を対象とした期間です。
この期間は一つの目安であり、実際の技術習得には個人差があります。


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